プロットもいいけど、「ストーリー」を組もう。
さて、筆を執るのも二回目になりました。池田です。前回お話しした通り、「プロット」の話をしていくつもり。お付き合いください。
ちょっと検索窓に打ち込んでみます。
プロット*1
1.《名》物語の筋。しくみ。
2.《名》観測値などを点でグラフに描き入れること。
ふむ、調べてみても1の用法からして間違ってはいないようです。
......いないのですが。
・「プロット」と「ストーリー」
今回はこの二つをセットにして掘り下げていきたいのです。
文章にしても、漫画にしても映画にしても、他のなんでもかまいません。これを知ったあなたが物語を伴う何かを作るとき、役に立てばこれ幸い、といった感じ。
実際僕もきちんと教わるまでは知りませんでした。
さてここで先生に登場してもらいましょう。
初版を見ると2005年ですから一昔前の本になりますね。*2内容としては古典『フランケンシュタイン』を批評しながら、物語の批評の仕方そのものを伝えるものです。創作の方法よりも物語の分析の方法論を説いていますが、二章立てになっている前半部では小説に使われる技法についてもっぱら述べてくれています。
その中で上述の「プロットとストーリー」が解説されておりまして。
批評、すなわち読む側としての姿勢について説明する本ではありますが、創作に転じていくことも可能です。最新の奇抜な手法というわけではありません。
しかし、アカデミックに、基礎の基礎をさらって教えてくれるという意味で良心的だなあと感じます。
本書において「プロット」 と「ストーリー」は峻別されており、
「ストーリー」と「プロット」は、一般にあらすじというような意味合いで、ほぼ同義に用いられる傾向がある。しかし、(中略)ストーリー(仏:histoire/露:fabula)とは、出来事を、起こった「時間順」に並べた物語内容である。他方、プロット(仏:disucours/露:sjuzet)とは、物語が語られる順に出来事を再編成したものを指す。(廣野,2005,p.9)
と実に明快に示してくれています。
このとき「プロット」は冒頭の意味では決して使われえません。
そして本書は様々な物語を書いていく方法を確認しながら書かれた物語を読んでいく方向へ転換していきます。*3
今回はそこから「プロットとストーリー」を抜粋してお送りした、という経緯で書かれています。
さて、次は物語を書こうとするときにこの二つをどう使っていけるのか、僕なりにお話ししますね。
・創作において
実際のところ、時系列を追って綿密に書き進めていくような手法を取る人は少ないでしょう。書きたいシーンや山場、言わせたいセリフ、巻き込ませたいシチュエーションがふっと降りてきて、そこに向かって収束し、そこから放散していくような書き方をすることがほとんどだと思います。
僕自信もそうです。「ストーリー」通りに執筆していけなんて言われたら僕は無理だとはっきり答えます。
で・す・が。
書きたいように書いた下書きをいったん「ストーリー」に整理してみましょう。
つじつまが合うか確かめてみる、といった作業ができるようになると話が違ってくるんです。
回想、時間ループ、サスペンス、すれ違い...etc
こういう時間軸上の入れ子構造を自在に複雑に、けれどもわかりやすく操れるようになります。
「ストーリー」のレベルまで自分の下書きを分解しきった後、「プロット」に組み直します。
「プロット」を何種類か組んでみてどれが面白いか比較検討してみたり、査読してくれる人に「ストーリー」を伝えてから「プロット」で齟齬が発生していないか確認してもらったりできます。
「ストーリー」ではシンプルな物語であっても、「プロット」にしたとき時間の流れの構造を丁寧にコントロール出来ていると絶妙な効果がでます。
それにですよ。
『君の名は。』こういう作業しないで作れるわけないんですって。
いや、二回目を見に行くときに友達を引っ張っていったんです。彼が「まだ観てない」っていうもんですから、「是非観ろ、やれ観ろ、火曜日だから!安いから!」と説得して連れていきました。よくついてきてくれたなあ......。
でもOPが始まった瞬間に隣のやつがボロボロ泣き出すわけですから、彼にとっては「わけがわからないよ……」状態だったでしょうねぇ。
そうそう、ほむほむも時間跳躍してました。
「"Although I love you, but I will have to leap." ごめんなさい、まどか。」 なんてね。
とにかく、「ストーリー」と「プロット」、上手く使っていきましょう。
「池田」
中公文庫、岩波文庫、ちくま学芸文庫あたりは気付くと本棚に挟まっている。本当にお世話になることが多いです。出版業界が平和でありますように…。