ゲームのユニバーサルデザインについて考える〖高齢者ゲーム連載第2弾〗
お待たせしました!
前回は、「高齢者にとって本当に楽しいゲームってなんだろう…?」という話をしました。
高齢者向けのゲームってなんだろう…?〖高齢者ゲーム連載第1弾〗 - ツクリバ―「つくる」ためのヒントを―
今回はより具体的に高齢者にとって楽しいゲームについて、『ゲームのユニバーサルデザイン』に考えていきたいと思います。
「からだ」と「こころ」のふたつのテーマから、私が日々ゲームをしてて思う高齢者ゲームの案をつづっていくつもりです。
まずは、高齢者の「からだ」に合わせたゲームから
人間は、年をとるにつれて身体はどんどん衰えていきます。
なかでもゲームをする上で欠かせないのが、「目」だと思います。
いわゆる「老眼」の症状を自覚するのは45歳ごろがピークだと言われていて、近くのものが見えにくくなってしまいます。また、ひどいときには肩こりや頭痛にまで発展してしまう、なかなかやっかいなものなのです…
ワンボタンで、高齢者も見やすいゲーム画面に!?
若者にとっては問題なくても、高齢者にとってはストレスになってしまう…
いままでゲームをやってこなかった層をはじめ、いままでゲームを楽しんでいたが高齢者になってしまった層にもつらい状況になってしまいます。
そんな状況を解決する具体的なポイントとしては
- 明度
- 色彩
- 情報のかたち
の3つが重要だと考えています。
例えば、スマホ用のアプリゲームの「Stone of Souls」というゲーム画面を例にしてみましょう。
まず、「明度」に関しては、当たり前ですが暗すぎると高齢者はよく見ることができません。この画面は、おそらくレンガ作りの部屋のなかだと思われますが、これでは高齢者はもとより若者も部屋の様子がわかりにくいでしょう。
しかし、暗くてもしっかりと明度差があるとはっきりと見ることができるんです!
この画面で言えば、暗い部屋のなかでも炎が目立って見えているでしょう。このように画面のデザイン時に明暗の差を考えてみると見やすさも変わってくると思います。
次に、「色彩」についてですが、人間は年を経るごとに色彩の認識がしづらくなっていきます。
具体的にいうと暖色の色は認識しやすく、寒色の色は認識しにくくなっています。
いまのプレイステーション4の画面なんて天敵ですね(笑)
(引用元:https://www.jp.playstation.com/blog/detail/252/20150312_ps4.html)
こういった人間の色彩感覚にも目を向けていると、あなたのデザインに対する目線も変わってくるかも…?
最後に「情報のかたち」ですが、これは簡単です。画面に表示されている情報が
文字情報なのか視覚情報なのか という点です。
文字で書いてあった方がわかりやすいのか、画像や映像で表現してあった方がわかりやすいのか、といった基準なのですが、端的に言いますと文字情報は脳を疲れさせます。視覚情報の方が直観的に脳へと情報を届けられることでしょう。しかし、必ずしも視覚情報だけがよいというわけではありません。その辺りのバランスも、創作する側の腕の見せどころといったところでしょうか。
以上となりますが、若者のうちは特に気にすることもなく、ストレスも感じないような点でも目を向けてみると高齢者にとってはとてもありがたい、といった視点だったと思います。
大切なのは、情報量のコントロールだと思います。
かといって、安易に演出を地味にすればいいというわけではありません。
高齢者が多く遊んでいると思われるパチンコやメダルゲームは演出はとても派手です。
派手だけれど、「なにをすればよいか」が簡潔に伝わるデザインが「ちょっと遊んでみようかな」「年をとった自分でもやれそうだな」と思ってくれるきっかけになるかもしれません。
こういった、いわば形式面、アクセシビリティの部分は取り入れやすく、結果にも結びつきやすいと思いますので、創作をする際にふと思い出して活かしていただければ需要者の層に幅できる…なんてことも起きるやもしれません(笑)
アクセシビリティに関しては、すべて英文の記事ですがIGDA(国際ゲーム開発者協会)のアクセシビリティ専門部会が詳しくまとめていますので、気になった方はぜひ。
Game accessibility guidelines | A straightforward reference for inclusive game design
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さて、次は高齢者の「こころ」に合わせたゲームとなります。
(引用元:https://weekly.ascii.jp/elem/000/000/343/343467/)
上記は、角川アスキー総合研究所の『メディア・ライフスタイル調査2015』(調査協力者1万35人)の結果を基にしたグラフの一部です。
スマホやタブレットの普及によって、これらでできるアプリゲームは子供からお年寄りまでプレイされている結果となっていますが、携帯機や据え置き機の割合はいまだ年齢が高くなるほど減少傾向にあります。(もともとハード自体のシェアが減少傾向にあるというのもあるでしょうが…)
つまり、まだゲームは子供がやるもの、大人になってまでやるものではないものという認識が根づいていると言えるでしょう。
ゲームに対する偏見をどう砕くか
筆者が子供の頃はファミコンだけでなく、プレイステーションやゲームボーイなど様々なハードがリリースされていましたが、知識のない親からは関係なく「ピコピコ」と呼ばれ、当時は「ゲーム脳」なんて言葉も流行っていましたから、ゲーム自体をあまりよく思っていなかったようです。
ご家庭によって様々ではあったと思いますが、往々にしてゲームに対して偏見を持っている人が少なからずいた、そして今もいるというのが一般的な認識だと思われます。
高齢者にも親しみのあるテーマと題材を
やはりそうした偏見は、高齢者にとって理解できない、または親しみがなさすぎて理解の外側にある から生まれてしまうのではないでしょうか。ゲーム自体に対するものももちろんありますが、これはゲームというよりは機械自体への敬遠という可能性もあります。それは、操作性への不安だったりその機械が動く理屈がわからなかったりと、実際にやってみたり教えてもらえば解決する問題だと思います。
やっかいなのは、ゲームの内容についての知識がないという問題だと感じます。
現在のゲームの主要なジャンルはスポーツゲームを除けば、FPSなどのシューティングやアクションなど、ほとんどが現実とはリンクしていないフィクションな内容となっています。信長の野望やSim Cityなどのシミュレーションゲームは現実とリンクする側面は確かにありますが、それを知らない人がゲーム画面をぱっと見ただけで内容を理解するのはなかなか難しいです。
だからこそ、逆を言えば一目で自分が理解できる、知識があるものだとわかれば、高齢者も理解できないと決めつけずに、「自分にもわかりそう」「自分も知っているものだし、やってみようかな」となるのではないでしょうか。
ここで、私が推したいのは高齢者にも知っている世界観で、かつ現実へと接続できるゲームが高齢者にもプレイされやすいのではないか、ということです。
例えば、高齢者にも親しみのある時代劇を例にしてみるとします。時代ものはゲームでも信長の野望や戦国無双など題材としてはゲームにも採用されています。
『信長の野望・創造』ゲーム画面
(引用元:http://www.4gamer.net/games/215/G021583/20131212067/)
『戦国無双2 with 猛将伝 HD version』ゲーム画面
(引用元:
http://www.jp.playstation.com/software/title/jp0106pcsg00233_00jm2exver01000000.html)
これらの画面を見たときに、知識がない高齢者はどう思うでしょうか…?
少なくとも、ふたつのゲームが同じ戦国時代を主軸とした世界観であることに気づける 人はなかなかいないでしょう。よしんば、画面に映る文字情報やキャラクターのデザインなどで戦国時代であることは気づけても、なぜ、こんなにも画面が違っているのかがわかる人など、おそらくはいないと思われます。
そして、なにより高齢者の知識のなかにある戦国時代というものを取り巻くイメージと、ゲームがかけ離れている点が問題なのです。
自分のなかにある現実と、ゲームの世界観が一致しない。これにより、理解ができないものとしてゲームが認識されてしまう…そういった危惧なのです。
ゲームはフィクションであるため、随所で現実とは異なるように内容が形づくられています。それはよりプレイヤーに楽しんでもらうためには当然のことで、ゲームに親しんでいる人ならば問題なく理解することができます。
しかし、そうではない高齢者にとっては現実とどこかでつながっている、そういったことがわからなければ意味がありません。
高齢者にとって親しみのある要素との接続が必要になってくるのです。上記の時代ものでいうのならば、高齢者に人気の時代劇ドラマとの接続なんかが良いかもしれません。
『暴れん坊将軍』とのコラボレーションで、慣れ親しんでいるドラマの構成をゲームに置き換え、そのうえでゲームとしての面白さを追求していく、なんて面白そうです(笑)
上記の例はいささか極端ではありましたが、
高齢者にとっても親しみのある要素と接続し、それがわかるように工夫されていることが重要なのです。
こういった風にその世代の高齢者の間で流行ったものなどを取り入れてみることで、より多くの高齢者の興味を引くことになりますし、ゲームをプレイする高齢者の間でも交流が生まれる、なんてことが起きるかもしれません。
さて、大きく分けて「からだ」と「こころ」とで高齢者ゲームの模索をしてきましたが、普段からゲームに親しんでいる皆さんにとっても面白い、便利だという要素はありましたでしょうか?
若い、年寄り関係なく便利で面白い要素を発見できれば、それは単純にゲーム自体の魅力にもつながってきます。
「高齢者にも目を向けてみる」という視点を取り入れることで、自らの創作のさらなるクオリティをアップさせる(かもしれない)、そんな風になれば幸いです。
次回は、第3弾として「ゲームから広がっていく高齢者の可能性」について考えてみたいと思います。ラスト1回、お付き合いいただけると幸いです。
次回もお楽しみに。